世代を超え、キャリアの違いを超えて、楽しく集い語り、刺激を受け合い、自己実現と社会のウェルビーイングの拡張に貢献する

会長からのご挨拶

(2.日本教育経営学会会員の皆様へのご挨拶はこちら…)

1.日本教育経営学会にアクセスしてくださった皆様へ

日本教育経営学会ウェブ・サイトにアクセスくださり、ありがとうございます。日本教育経営学会の会長を2021年度から3年間、務めることになりました木岡一明でございます。本学会の会員の方々には、すでに学会ニュースでご挨拶させていただきました。ここでまたご挨拶をさせていただくにあたり、本学会に関心を持っていただいた方や入会を考えておられる方に向けて本学会へのご案内を兼ねて、ご挨拶申し上げたく存じます。

本学会は、会則で「教育経営の研究と実践を促進し、その普及を図ることを目的とする。 」ということを宣言しています。

でも、教育経営って何?というのが、おそらく最初に抱かれる疑問だと思います。会社経営ってイメージしやすいでしょうし、人事や財、施設や設備をうまく運用していくことが経営の中身だと思われるでしょう。確かにそうしたイメージからすると、営利を目的としない公立学校などに経営という言葉を使うのは、すっきりしないという方も少なくないかもしれません。実際、本学会創設以来、本学会の学問的基盤を疑う批判を様々な方面からいただいてきました。そこで、こうしたご疑問やご批判に対して、わたしがなぜ教育学研究者を志し、教育学の諸分科の中で本学会に入会し、今、会長をお引き受けしたのかをお話しすることで、わたしなりの回答をご説明いたしたいと思います。ただ、先にお断りしておかねばならないのは、わたしは本学会だけでなく、日本教育行政学会や日本教育制度学会にも所属し長年、各々の学会でも理事を務め、以下に述べますことに通底する問題意識を有してそれぞれの学会活動を担ってきていることです。その理由も含めてご説明したいと思います。

まず、なぜ教育学を志したかです。わたしは、祖父の破産などのため、経済的に貧しい幼少期を過ごしました。そんな自分がこの先、社会で自律的に生きていくには、教育を受けて能力や技術を得ることしか方法がないと観念していました。学校では、さまざまな先生たちから教えを受けました。今でも感謝している先生方がいらっしゃいます。その一方で、1960年代という時代背景の中で、教えることに膿んでいる方や、疲れておられる先生、互いに足を掬おうとされている状況も見えることがありました。教育に圧っされて病んでいった親友との付き合いもありました。だから、こうした教育の現実を変えることが必要だと強く思うようになり、大学に進学しました。当初の進学動機は文部官僚になって教育改革を果たすことでしたが、結局、それを諦め、社会的関心を高めていた臨床心理学を深めたいと思い直して心理学を専攻することにしました。しかし、しだいに行き詰まっていきました。直接的には、上に書いた親友からの、人の心に土足で入ってくる奴にお前はなるな、という言葉でしたが、実は、個なのか社会なのか、どっちにアプローチするのが目指す教育の実現や保障に繋がるのかがわからなくなっていたのです。そんな折に、ある先生に出会いました。

その先生は、国家論から公教育変革を説かれ、聴いているうちに学問の愉しさが響くように伝わってきました。わたしが進んだ大学は、学科目制(科目に応じて教員が配置。一人の教員が複数の科目を教授することも多)であったため、迷った末に4年次で教育学に転専攻した結果、その先生から教育制度論や教育行財政学、学校経営論を集中的に受講することになりました。そのためか、三者の学問的違いよりも共通点や連続性を考えることが多くあり、わたしにとって分けて考えるという発想はありませんでした。むしろ、公教育制度―教育行財政―学校―教育という連なりのどこに変革の切り口を定めるのかに大きな興味や関心が引き寄せられましたし、その切り口を探して貪るように教育法学や教育制度学、教育行政学や学校経営学の本を読み、教育学研究への憧憬が強まり進学を決意しました。

大学院に進学して学校経営学を専修することになりました。ただし、研究室の自由な学風の中で、当初は学校経営学を専修しているという自覚はありませんでした。しかし、その年度の末、E.H.シャインの『組織心理学』の翻訳本が岩波書店から出版されました。この本を読んだときに、これまで自分の考えてきたことが繋がったような気になりました。実は、学部時代にラグビー部に所属していたのですが、部員が15名に満たない極小クラブでした。それでも、スクラムの組み方しだいで総重量の勝る相手チームを押し負かすことを知っていましたし、戦略によって優勝できることも経験していました。こうした経験から、足し算以上の力を発揮できるメカニズムは様々な組織や機関にも適用できるのではないかと考えていたのですが、この本は、その考え方に大きなヒントを与えてくれました。また、心理学専攻だったことが必ずしも無駄ではなかったのではないかとも思わせてくれました。そして、メンバー個々の「自律」と「協働」の強化がどんな組織や機関でも、だから学校でも、パワーを生み出すと考え、その強化を図る働きが経営なのだと捉えるようになっていきました。ただ、この考えを展開するには少し時間を要しましたが、ようやく学校経営学を専修している実感も湧いてきました。

大学院を終えてから大学や研究機関に職を得てきました。当然に、教育や研究で経営を考えるだけでなく、職場を経営するということも考えるようになりました。特に、名城大学に置かれていた「大学・学校づくり研究科」では、大学職員も学びにきていたこともあり、授業外や研究科外での振る舞いにおいても言行一致を強く意識してきました。

今は、結局、教育の現実をつくっている学校、その学校の教職員や子どもたちの「自律」と「協働」を強化しうる仕組みの開発が、わたしの中高生時代の不満や疑問に応えるものであり、教育学を志した問題意識に繋がると捉えています。同時に、学校や先生方、そこで学ぶ子どもたちを窮屈に枠づけている教育制度や教育行財政を批判的に検討していくことも必要だと思っています。だから、わたしの問題意識は本学会での活動で完結するものではありません。しかし、コアとなる「問題」は、学校の中や個々の学校の周辺にあり、その問題解決を図っていくことが自分の研究的使命だと思っています。もちろん、教育組織というフレームは学校だけでなく、公民館などの社会教育機関、あるいは教育委員会事務局にも適用できます。だから、それらの教育組織をターゲットにした研究もまた、本学会の射程に収まっています。ただ、本学会にも世代交代の波が押し寄せてきています。そんな波間において、次代に繋がる学会体制を創っていくことがわたしの本学会への恩返しになるのではないかと思い立ち、会長をお引き受けすることにいたしました。

でも、研究は愉しくなければ続きません。教育研究を愉しみたい方、愉しみ方を知りたい方、一緒に教育組織や機関の経営を語り合いましょう。きっとこれまでにはなかった思考様式に出会えるかと思います。心よりご入会をお持ちしています。

2021年8月
日本教育経営学会会長 木岡 一明

2.日本教育経営学会会員の皆様へ

(学会ニュース2021年1号より)

元会長堀内孜先生のご逝去は、私情から先に申し上げれば、それが現実になってしまった今、わたしには筆舌に尽くしがたい悲しみと寂しさ、激しい痛みを産んでいます。が、会長職に就いた身として述べるべきは、先生の長年にわたる本学会へのご尽力とご貢献に心から感謝いたしておりますということであり、ここに慎んでご冥福をお祈り申し上げますとの弔意であると観念しています。改めて、先生、ありがとうございました。安らかにお眠りください。

さて、本学会はすでに60年余の歴史を有しており、堀内先生のお薦めでわたしが入会した頃(1980年)からみると、様々な社会変動の波を受けながら会員層の拡がりやそれに伴う研究関心の拡がり、研究知見の蓄積と普及、教育現場との連携強化など、大きく変貌を遂げてまいりました。

このような歴史のある学会の会長職に就くことにはいくつもの逡巡がありますが、ここは覚悟を定め、わたしを育てていただいた本学会と、堀内先生をはじめご指導いただいた諸先生方へのいくばくかの恩返しとなるよう、事務の外部化など学会運営基盤を整えていただいた佐古前会長はじめ旧事務局の方がたに感謝し、わたしなりに学会のさらなる充実と発展にいくばくか貢献いたして参りたいと思います。その結果、わたしにとってそうであったように、世代を超え、キャリアの違いを超えて、楽しく集い語り、刺激を受け合い、自己実現と社会のウェルビーイングの拡張に貢献できる学会であり続けたいと願っています。

そのため、会長職に就くにあたり、以下のことをとくに留意して皆様とともに学会活動を推進したいと考えております。

第1には、佐古前会長が重視されてきた研究と実践の関係強化、布置関係の明確化を継承したいと考えております。会員の皆さんが実際の活動の場で自信をもって日常の指導やマネジメントに向かっていただけるよう、本学会の知見をいかに日常のマネジメントに還元できるのかを明示していきたいと思います。そのためには、これまでの「実践の学としての教育経営学」の探究に連なりますが、わたし自身は、実践と理論は離れて存在するものではなく、実践者にも依拠する理論があり、研究者にも範型としての実践があるはずで、それらが特定の場(教育空間)において対峙し、修正や融合、発展や転換を果たしていくものだと捉えています。そのメカニズムは何か。この問題解明を、実践推進委員会を軸に展開し、紀要編集委員会とも連携しながら、実践者・研究者それぞれの暗黙知を形式知に変換して本学会における共通言語体系を構築するとともに、公教育システム全体のマクロな視点と個々の実務におけるミクロな視点を繋いでいきたいと思います。

第2には、本学会における行財政学的アプローチの強化です。実際の場に目を向ければ、各校における様々な研究指定の獲得や、補助金獲得、地域からの資源調達をめぐる戦略的なマネジメントが、「できる校長」の手腕にかかっているし、教育委員会でも首長部局との予算折衝や文科省等との補助金獲得などをめぐって、やはり「できる教育長」のマネジメント手腕が発揮されていることが見えてきます。こうした問題を本学会において固有の問題として取り上げることで、他学会とは異なる視角からの行財政学的アプローチがあり得ることを示すのみならず、財の調達、獲得、執行の過程を動態 的に捉えうるものとしダイナミックな研究を生み出すことになります。そして、その結果、本学会の裾野とスコープが拡がり、明確に本学会のアリーナが公教育全体を俯瞰しうるものであることが確認され、研究の基軸が公教育システムを縦貫するものであるとの確信が得られるものと思います。また その確認と確信がなされることによって、若手会員が本学会に属していることの安心感と充実感、研究課題を得やすくなるのではないかと思いますし、財務問題への展開が事務職員の働きや学校事務にもっと眼を向けることになり会員層の更なる拡がりが期待できるのではないかと思っています。

第3には、グローバル化への対応です。日本の教育経営研究への国際的ニーズの高まりに対して応えうるよう、学会として下地づくりを進めていきたいと考えております。近年次々に打ち出されている教育改革とも関連して、高等教育においても国際的に活躍できる人材の育成、派遣が求められてきています。こうした要請に、本学会としても応えていきたいと思います。 そのため、国際交流委員会の活動を軸としながら、紀要編集委員会との連携強化も図りつつ海外への発信力を高め発信量を増やしていきたいと思います。

他にも課題は山積し、新たに流入してきてもいます。限られた任期でどこまで応えうるのか、もとより非力な身の上、加齢も進んでおり、できることには限りがありますが、雲尾周事務局長、風岡治事務局次長をはじめ事務局の方々からの心強いサポートを受けながら、皆さまのご支援とご協力を得 て学会の充実・発展に努めたいと考えております。どうか皆さま、よろしくお願いいたします。

2021年8月
日本教育経営学会会長 木岡 一明

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