本学会の始まりは、1958年6月24日、東京大学教育学部に10数名の研究者が参集して開催された小さな研究会にあったとされています*。当時は特に名称を定めることなく、9月、10月、12月と研究会が重ねられました。そうして、1958年12月13日に会則を定めることをもって「教育経営学会」として正式に発足しました。会則第2条には、発足以来、「本会は教育経営に関する諸般の研究を促進し,研究の連絡,情報の交換を図ることを目的とする。」と記されています。
1956年の地教行法制定に伴う公教育体制の変化や高度経済成長に連動する教育経営環境の変動などを背景要因として、学会創設に携わった研究者たちは、教育学研究に新たな研究領域を切り拓く必要性を強く意識していました。1958年に4回、1959年に3回の研究会を地道に積み重ねた後、1960年5月の日本教育学会第19回大会の3日目に全国の会員が一堂に会する最初の機会として「第1回教育経営学会総会」が開催されました。それに先だち、同年4月には今日の学会紀要に繋がる「教育経営学会会報 No.1」が刊行されています。
1961年3月には「教育経営学会報 第2号」が紀要の体裁をもって刊行され、同年4月22日には初めての年次大会が開催されました。それ以来、学会紀要の発行と年次大会の開催を主要な活動として、本学会は発展を続けてきています。なお、「紀要」の名称は、「教育経営学会紀要 第9号」(1967年)から用いられ、1974年の第16号から「日本教育経営学会紀要」となりました。
本学会は、時代の変遷とともに研究活動の質を高めるとともに活動内容の幅を大きく広げてきています。
1990年には研究推進委員会を発足させて年次大会での課題研究の系統性・計画性をいっそう高め、学会としての共同研究を活発に推し進めてきました。
1992年には国際関係推進委員会を新設して研究の国際交流の推進に着手し、1995年に国際交流委員会と名称を改めて、教育経営に関する内外の情報交流を深めることに力を注いできました。2008年には、日本の教育経営に関する最新情報を海外に向けて発信する事業として”Educational Administration and Management in Japan”(Cengage Learning Asia Ote Ltd, 2008)を刊行し、学会創設50周年を記念して国際シンポジウムも開催しました。
研究活動においては、創設以来、「教育経営」を鍵概念として教育事象にさまざまな方法でアプローチする努力とその成果の蓄積を続けてきましたが、1990年代後半以降には、それに加えて教育経営の実践に対する貢献を意図した活動にも積極的に取り組んできました。その一つが、1999年の「地方分権一括法」を受けて日本教育行政学会との共同で2000年に「学校管理規則参考案」を作成・公表したことです。また、2003年には「学校管理職の養成・研修システムづくりに向けて」を公表し、学校の自主性・自律性の確立を目指す教育改革の進展に対応すべく、校長をはじめとしたスクールリーダーに求められる新たな役割を踏まえてその資格任用および養成のあり方を見直す必要性についても提言しています。
こうした実績を土台として、教育経営の実践に対する貢献を学会活動として正式に位置づけてその内容を確かなものとするために、2006年には実践推進委員会を発足させました。そこで検討を重ね、2009年には「校長の専門職基準〔2009年版〕」を公表しました。
初めて総会が開かれた1960年の会員数は49名(4月5日当時)、6年後の1966年は96名(6月1日当時)でした。当時の会員のほとんどは大学で教育学を専攻する研究者でしたが、現在ではさまざまな現場で教育実践に携わるメンバーが数多く在籍しています。発足以来50年を超える歴史を経て、2019年1月12日現在の会員数は、635名に達しています。大学や研究所等で教育経営学を専攻する研究者はもちろんのこと、学校現場で教育経営の実践に携わる一般の教員・事務職員および学校管理職、生涯学習・社会教育の実践に取り組む様々な実践者、教育委員会で教育行政に携わる指導主事や教育長など、あるいは教育実践者の研修プログラムの企画・運営・実施に携わる者など、じつにバラエティに富んだ会員どうしが、教育経営に関する多種多様な研究と実践に取り組み、互いの成果を交流しあっています。2018年には創立60周年を記念して『講座 現代の教育経営』全5巻(学文社)を刊行しました。
* 1958年から1960年代にかけての記述は、上滝孝治郎氏による「教育経営学会の沿革」(『教育経営学会紀要』第9号、1967年、52~57頁)に基づいています。
歴代会長
氏 名 | 主たる職 | 在任期間 |
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細谷 俊夫 | 東京大学・教授 | 1958.12.13~1971.5.31 |
大嶋 三男 | 東京学芸大学・教授 | 1971.6.1~1977.5.31 |
幸田 三郎 | 青山学院女子短期大学・学長、教授 | 1977.6.1~1981.5.3 |
吉本 二郎 | 東京教育大学・教授、大正大学・教授 | 1981.6.1~1987.6.6 |
永岡 順 | 筑波大学・教授 | 1987.6.7~1991.6.9 |
高野 桂一 | 九州大学・教授、早稲田大学・教授 | 1991.6.10~1994.6.5 |
牧 昌見 | 国立教育研究所・次長 | 1994.6.6~1997.6.1 |
中留 武昭 | 九州大学大学院・教授 | 1997.6.2~2000.6.11 |
小島 弘道 | 筑波大学大学院・教授 | 2000.6.12~2003.6.8 |
岡東 壽隆 | 広島大学大学院・教授 | 2003.6.9~2006.6.5 |
堀内 孜 | 京都教育大学・教授 | 2006.6.6~2009.6.6 |
天笠 茂 | 千葉大学・教授 | 2009.6.7~2012.6.9 |
牛渡 淳 | 仙台白百合女子大学・教授 | 2012.6.10~2015.6.19 |
浜田 博文 | 筑波大学大学院・教授 | 2015.6.21~2018.6.9 |
佐古 秀一 | 鳴門教育大学 理事・副学長 | 2018.6.10~2021.6.5 |
木岡 一明 | 名城大学・教授 | 2021.6.6~2024.6.8 |
元兼 正浩 | 九州大学・教授 | 2024.6.9~ |